一蹴 本とか映画とかドラマとか

本、映画、ドラマをとりとめなく語るブログ

身近な問題の手助けになる『自分のあたりまえを切り崩す文化人類学入門』

最近、価値観の違いが深刻な問題となっているニュースをよく目にする。その一つが「闇土葬」だ。宗教上の理由でどうしても土葬が必要な人々が、日本の霊園に無断で侵入し、勝手に遺体を埋めてしまうというものである。 1. 「郷に従えない」理由の根源 日本で…

名作『贖罪』を再読するということ

はじめに 本を再読する動機は、大きく分けて二つある。 一つは、自身の読解力の弱さゆえに、一度では理解が及ばず、再読が必要な場合である。 もう一つは、特に小説において、物語の終盤で「そういうことか!」と作者の構成力に一本取られたときである。この…

読書の落とし穴:『わかったつもり』が理解を深めるのを邪魔する

本を読んで「なるほど!」とすっきり理解できた瞬間は気持ち良い。しかし、すっきり「わかった」と感じた時こそ、実は理解がそこで止まってしまっているのかもしれない。 わたしは、直感的に少し「わからない部分」が残った読書体験のほうが、読後にそのこと…

『完全版 ローマ人への質問』パクス・ロマーナに学ぶ「寛容」の力

古代ローマの歴史に心惹かれるのは、なぜだろうか。カエサルが好き?映画『グラディエーター』の剣闘士やマンガ『テルマエロマエ』の温泉好きローマ人の物語が好き?それもそうだが、古代ローマから受け取るのは、現代にも通じる普遍的なテーマ「寛容」の力…

PK戦から学ぶプレッシャーとの向き合い方『なぜ超一流選手がPKを外すのか』

はじめに ワールドカップが近づき、サッカーに関する本を手に取る人は多いだろう。しかし、私がこの本を読んだ理由は、少し違う。 きっかけは、受験や定期テストで信じられないミスを繰り返す自分の子どもだ。ピアノのコンクールでも、練習では一度も間違え…

フーダニットの魅力とミステリ『見知らぬ人』

ミステリの中でも、最もオーソドックスに楽しめるのはフーダニット(Who done it?)である。 誰が犯人なのかという一点に絞られた謎解きこそ、このジャンルの醍醐味だ。犯人が犯行を隠すための複雑なトリックや、精巧なアリバイ工作にはさほど関心がない。 …

入院するときに持っていく小説のタイトルとしては不謹慎だったかも『死はすぐそばに』

はじめに 今年の6月初旬、大腸ポリープ切除のため1泊2日の入院予定だったが、ポリープ切除中に腸に穴が空いてしまい、1週間の入院延長を余儀なくされた。その間、絶食と点滴で生きながらえる日々を送り、映画『セブン』に登場する点滴で生きながらえた人物を…

乱読のススメ:書物飽和時代を生き抜く読書術『乱読のセレンディピティ』から学ぶ

はじめに 世の中はコンテンツで溢れかえっている。動画、SNS、ポッドキャスト、映画、ドラマ、音楽、ゲーム……挙げればきりがない。そして、書物もまた、紙媒体から電子書籍まで無数に存在する。 これらアナログ・デジタル問わず、あらゆるコンテンツは私たち…

2025年のヘビ年と『ヘビ学』が教えてくれること

はじめに ヘビ年である2025年は、変化の年だといわれる。 これは、ヘビが脱皮を繰り返して成長する姿に由来しており、「生まれ変わり」や「再生」「新たな自分との出会い」を意味するとされる。 本年もすでに半年ほど経過したが、私事では変化があった。 自…

『化学の授業をはじめます。』”我慢するな、自分で決めろ”という声が響く

はじめに 積読とはいいものである。 (ここでいう積読とは電子書籍ではなく、物理的に積んである本のことであると、あらかじめ断っておく。) 数年前に購入した本は、その当時に「読みたい」と思って手に取ったものの、何らかの理由で読む機会がそがれ、本棚…

年末ドラマで観たい『討ち入りたくない内蔵助』

はじめに 昭和、平成の時代、年末の定番ドラマといえば「忠臣蔵」であったように記憶している。 しかし、令和になってからはその姿をほとんど見かけなくなった。 制作側からすれば、年末のためだけに長時間ドラマを制作し、有名キャストを揃えて多くのコスト…

書店でタイトルを見ただけで買いたくなる『それいけ!平安部』

タイトル買い 『それいけ!平安部』を本屋で平積みされているのを見て、「平安部てなんやねん!」とツッコミを入れたのなら、すでに作者の術中にハマっているといえる。『それいけ!平安部』は、『成瀬は天下を取りにいく』や『婚活マエストロ』の作者・宮島…

リスキリングの重要性と『ULTRA LEARNING 超・自習法』に学ぶウルトララーニング

社会人になると、日々の業務に加え、新たなスキルを身につけることが求められる時代になってきた。特にICT分野では急速な変化に対応するため、リスキリングが必要とされ、関心を集めている。 しかし、自分の仕事以外の技術習得となると、負担に感じる人も多…

「社会科」の苦手を和らげるために『世界史と地理は同時に学べ!』はどう?

はじめに 我が愛娘は「歴女」である。大河ドラマは小学校4年生の頃に一緒に観ていた『麒麟がくる』から毎年欠かさず、いや毎週欠かさず視聴しており、NHK公式ガイドブックを手元に置いてドラマを観ている。今年、令和6年の大河ドラマ『光る君へ』も大好物ら…

哲学的なテーマもあるしっかりあるSF『ミッキー7』

小説のネタバレを回避しながら感想を伝えるのは素人にとって難しい。日曜の朝刊の書籍紹介を読むと、その難しさを実感する。彼らはネタバレを避けつつ、読者に本を読ませたくなる文章を書いており、さらには我々をスマホを開いてAmazonのページに誘導させる…

人が死なないミステリ『ロンドン•アイの謎』

『ロンドンアイの謎』はヤングアダルトミステリのジャンルに分類されるであろう、「人が死なない」ミステリ作品だ。 著者のシヴォーン・ダウドは2007年に『ロンドンアイの謎』を刊行するも翌年、乳がんで47歳という若さでこの世を去った。(詳細はこちら:リ…

綺麗な図版で知的好奇心を満たす『ドーキンスが語る飛翔全史』

ドーキンスの語る「科学」はいつもわかりやすい。たまにその語りが伝えたい内容のテーマから横にそれることもあるが、それも知識として無駄のないものなのだ。そんなドーキンス節が味わえるのが『ドーキンスが語る飛翔全史』である。 どんな本? 『ドーキン…

リバタリアンだらけの街は住みやすいのか?『リバタリアンが社会実験してみた町の話:自由至上主義者のユートピアは実現できたのか』

リバタリアンと言われても、日本ではピンとこない。そして、その思想を高らかにこの国で叫んでも、なびく人は少ないだろう。そんなことを言うと日本のリバタリアンからおしかりをうけそう。では、リバタリアンの定義をここでみてみよう。 リバタリアンとは何…

アイロニーとユーモアがつまった『こうしてイギリスから熊がいなくなりました』

タイトルどおり現在はイギリスから熊が存在しないらしい。 その事実を踏まえてミック•ジャクソン風の皮肉の効いた奇妙な熊たちの物語へと料理された短編集である。 なぜイギリスから熊がいなくなったのか なぜイギリスから熊がいなくなったかを調べてみると…

地政学本の入門としていかが?『恐怖の地政学』

ニュースを見ていると、なぜロシアはウクライナに侵攻したいの?と漠然とした感じでネット検索してしまう。結果として理由が次々とでてくるのだか、まずそれは横に置いといて、地政学的にどうなんだ?と思ったのなら大規模な書店に行くとよい。平積みのコー…

アンディ•ウィアー『アルテミス』も読んでおこう

現在SF小説で大ヒットしているのは『プロジェクト•ヘイル•メアリー』。アンディ•ウィアーの長編小説第3作である。ライアン•ゴスリングが主演で映画化も決定している。 もし『プロジェクト•ヘイル•メアリー』をアンディ•ウィアー作品として初めて読んだのな…

『オスマン帝国-繁栄と衰亡の600年史』で600年の歴史と世界史を同時に学ぶ

歴史の堅苦しい本は飽きるし、項数多くて分厚いし、硬い文体で眠ぬて読めなくなる本が多いので、新書で読みやすい『オスマン帝国 繁栄と衰亡の600年史』(以下『オスマン帝国』)を手にとってみました。 この『オスマン帝国』は600年余りのオスマン帝国の通…

SFでミステリで『書架の探偵』

ジーン•ウルフの作品を何か読みたいんだか何がいいの?と聞いてみたら、誰かが『デス博士の島その他の物語 』をオススメしてきた。タイトルとカバーとレビューを見ただけで遠慮してしまって、もうちょっと軽めの作品をと希望した回答が『書架の探偵』だった…

『誓願』はディストピア小説にとどまらない

『侍女の物語』の続編『誓願』 マーガレット•アトウッド『誓願』は同作家『侍女の物語』の続編。舞台は前作から15年後の世界。単に「フェミニズム文学」と言ってしまうと、そうなんだけど、その先入観で読みすすめてしまうと思うので、もっとエンタメ的な視…

『The Coddling of the American Mind』は教育者向けの本だった。

はじめに ツイッターのタイムライン上で題名を見ただけで吸い寄せられるようにkindleでポチった未邦訳だった本書。 当初は気が引けていたが、英語圏読者の感想がポジティブで、内容も面白そうだったのと、ノンフィクションなので、英語の言い回し(比喩と引…

『三体Ⅲ 死神永世』やはり凄いSFだった

『三体』三部作が3巻目『死神永世』(ししんえいせい)で完結した。完結したあとも、本書の解説に書かれているように、本国ではファンメイドの外伝小説が生まれたり、Netflixでドラマシリーズの告知もされた。本国で発売されて10年ほど経っても『三体』の勢…

子育て中に読みたい『子どもが育つ魔法の言葉』

子どもは親の鏡 とは本当言い得て妙。 この本の冒頭はこの題名の詩が書かれています。 誉めてあげれば、子どもは、明るい子に育つ 愛してあげれば、子どもは、人を愛することを学ぶ 認めてあげれば、子どもは、自分が好きになる 見つめてあげれば、子どもは…

ディックのSFではない作品『市に虎声あらん』

フィリップ•K•ディックが23歳のときに書いたSFではない文学作品。 あらすじ 主人公のスチュアート•ハドリーはTV店で働いている。自分は何かと違うと感じながら、あるとき、黒人教祖のベックハイムの説法を聞きいって、ベックハイムに会いにいってから、ハド…

今年読みたいSFのひとつ『最終人類』

『最終人類』は上下巻に分かれた長編SF小説。上巻は人類の主人公が種族の違う異星人の仲間たちと目的をもって宇宙に飛び出し、映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』さながらの雰囲気。下巻では急転直下の展開で、壮大で哲学的なテーマになる。『三体…

SFが好きなら読んで欲しい『裏世界ピクニック』

何やら今期のアニメでやっているということで、原作小説を既刊の5巻までイッキに読んでみました。 主人公は紙越空魚(かみこしそらを)が、相棒の仁科鳥子(にしなとりこ)と裏世界と呼ばれる、奇妙な世界に行って、奇妙な生物を倒して、不思議なお宝を手に…