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「いかにしてアーサー王は日本で受容されサブカルチャー界に君臨したか」はオススメ

本のタイトル通りなんです。日本ではアーサー王ネタを好きですね。好きというより、知らず知らずにサブカルに染み混んでいるのではないでしょうか?この本はアーサー王物語、円卓の騎士から中世騎士道の変遷にはじまり、夏目漱石宝塚歌劇団FateドラクエⅪなどなど、日本の文化への浸透をアーサー王伝説を研究している各専門家が考証している興味深い本です。アーサー王物語が好きな方はもちろん。アーサー王の物語をまったく知らなくても「ランスロット」「ガウェイン」「パーシヴァル」「聖杯」「騎士道」そんなキーワードにピンと来たのなら、この本を強くオススメします。さらに派生して、この本の参考文献からアーサー王物語関連書籍を掘りさげてみてはどうでしょう?

この本で取り上げている作品の一部

夏目漱石の薤露行(かいろこう) 日本初のアーサー王物語をモチーフにした短編小説。夏目漱石の他の作品に比べると知名度が劣る作品で、擬古体という独特の文体のため難解に感じられる。(私も読んでません…)夏目漱石も、大変苦労してこの薤露行という作品を完成したらしい。そして、この作品から日本でのアーサー王物語の受容がはじまったということです。さすが漱石

円卓の騎士物語 燃えろアーサー マニアックなところついてきたな(笑)。1979年の放映されたアニメ。この作品は中世や騎士道などの要素をアニメに持ち込んだということ。とくに子供向けに変容しアレンジしているとのこと。このあと聖戦士ダンバイン機甲界ガリアンなどが放映されたことを考えるとファンタジーや騎士道をアニメに持ち込んだ一助になったと示唆しています。ただこの作品は視聴率低迷で打ち切られたようですが…。

ドラクエドラクエシリーズアーサー王物語を取り込んでいるのはドラクエⅪとのこと。たしかに中世ファンタジーものであるが、他のRPGのようにエクスカリバーや聖杯など直説的な表現を扱っているドラクエ作品はすくない(星ドラ除く)。ちなみに「ロト」は「ガウェイン」の父親と同じ名前とのことです。ドラクエⅪはとくに騎士道を扱っている作品のため、アーサー王物語からの影響を感じるのではないかとのことです。「アーサー王」という表現も実際ゲーム上もでてきます。さらに、現代に合わせた独自のアレンジが加わっているとのこと、騎士道によくある、婦人への献身を取り除いてる。か弱き女性を助けるという古き騎士道ではなく、騎士は人民の守護者という描かれ方をしていると考察しています。

ざっとあげましたが、他にもFateカズオイシグロの「忘れられた巨人」など、アーサー王伝説をメタ的に扱ったものの作品の考証なども載ってますので、じっくり読むと楽しめること請け合いです。 個人的には、読みやすいアーサー王の物語をひととおり読んでみようと思います。