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『オスマン帝国-繁栄と衰亡の600年史』で600年の歴史と世界史を同時に学ぶ

歴史の堅苦しい本は飽きるし、項数多くて分厚いし、硬い文体で眠ぬて読めなくなる本が多いので、新書で読みやすい『オスマン帝国 繁栄と衰亡の600年史』(以下『オスマン帝国』)を手にとってみました。

この『オスマン帝国』は600年余りのオスマン帝国の通史をさくっと知ることができ、オスマン帝国が存在した時代の周辺国の歴史も知ることができます。世界史を学ぶ上で一石二鳥な本です。

新書で歴史を学ぶ方法

なぜ世界史を学ぶ上でこの本が一石二鳥なのか説明します。世界史の通史をひととおり勉強する上で、必要な感覚がある気がします。その感覚とは、とある出来事がこの時代のこの国や地域で起こっていたときに、遠く離れたあの国や地域ではなにが起きていたのか?という歴史の流れをとらえるような<歴史上の時間感覚>です。

偉そうに言ってますが、私は歴史の専門家でもなく、歴史の教師でもありません。社会人になって、世界史に興味を持っていろいろ独学しているただの歴史好きの素人です。

その単なる歴史好きの素人が、<歴史上の時間感覚>をとらえるために何をしたらいいのか?と考えてみたところ「何百年にもわたって存在した帝国の歴史を捉えてはどうか?」と思いました。

なぜなら、その帝国の通史を学ぶと、他国との通商や戦争から、帝国の時代ごとに、どこの国と何を起こしていたのかを知ることができるからです。

そこで、比較的息の長い帝国を探すと、オスマン帝国があります。600年ほどの長い帝国です。このような理由で、本書の『オスマン帝国』は通史も知ることができで、前述した<歴史上の時間感覚>も得ることができる一石二鳥な本なんです。

本書の概要

目次

序章 帝国の輪郭

第1章 辺境の信仰戦士―封建的侯国の時代:1299年頃‐1453年

第2章 君臨する「世界の王」―集権的帝国の時代:1453年‐1574年

第3章 組織と党派のなかのスルタン―分権的帝国の時代:1574年‐1808年

第4章 専制と憲政下のスルタン=カリフ―近代帝国の時代:1808年‐1922年

終章 帝国の遺産

メフメト2世とスレイマン1世の時代で世界史を学ぶ

目次をみるだけでも新書サイズの文量の中にオスマン帝国600年の歴史が凝縮していることが確認できる優れた新書です。

ここでは前述した、<歴史上の時間感覚>を会得する箇所をピックアップしてみましょう。本書の第二章【君臨する「世界の王」】には、ヨーロッパ諸国とりわけキリスト教世界との対峙が窺える2人の王について言及されています。

メフメト2世 ビサンツ帝国を滅ぼし、コンスタンティノープルを征服してキリスト教都市からイスラム教都市イスタンブールへと変えた。(Netflixのドキュメントドラマの感想の記事はこちら→Netflixオスマン帝国:皇帝たちの夜明け』雑感)

レイマン1世 オーストリアハプスブルク家と激突し、ヨーロッパ諸国やサファヴィー朝と渡り合った。

この時代の違う2人の王はオスマン帝国の通史のなかでも、歴史の分水嶺にいた王たちです。メフメト2世がいなかったらビサンツ帝国はもうすこし生きながらえていたかもしれないし、スレイマン1世が活発にヨーロッパやサファヴィー朝に遠征する人物でなければ世界は変わっていたかもしれません。

その王たちがいた時代の足跡を追うだけでも世界史の流れをつかむ助けになります。

各時代のヨーロッパ諸国とオスマン帝国との衝突を追うことで、「あの王がこの時代に統治してたのね」というよう感じに、当時の隆盛と衰退が交互にめまぐるしくかわった西欧諸国の<歴史上の時間感覚>を同時に得ることがでます。

おわりに

歴史を学ぶ方法はたくさんあって何から手につけていいのやらと悩む人は少なくありません。手始めに新書サイズの歴史本を手にとるにしてもたくさんあります。自分の知りたい時代の歴史から入って、興味のあるものに枝分かれしていくといいのかもしれません。本書のような息が長かった帝国の通史ものを読んでみると、そこに関わった国々が見えてくるので、さらに歴史を学ぶための参考になると思います。本書はそういう意味でもオススメの新書ですね。

オスマン帝国-繁栄と衰亡の600年史 』(小笠原 弘幸著 中央新書)