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『medium 霊媒探偵城塚翡翠』と『ザリガニの鳴くところ』の2冊

最近読んだ2冊の小説。 どちらも結末が最後に「そうくるか!」というのが感想です。

物語の構成はどちらも凝っていて最後に伏線を回収していきます。物語の描写は『medium霊媒探偵城塚翡翠 』の方は多重なトリックだったり、登場人物の言動や行動がよく描かれてて、最後にはだまされた(笑)。『ザリガニの鳴くところ』の方は湿地の美しい生物たちの生態や、孤独に生きて立派に成長する少女に感情移入しやすく描かれている。どちらも素晴らしいミステリです。

ライトノベルから脱却

まず『medium霊媒探偵城塚翡翠』。探偵小説作家と霊媒師のコンビが事件を解決していくコンビ探偵もので、物語では2人がコンビになってから3つの事件を解決する。 これは賛否両論あるなと思い読後にAmazonレビューみたがやはり…。読む前はAmazonレビューは見るべからず!どうしてもプライミング効果ていうものがでるからね。評価が低いと、読まないでいいか。という気持ちがでてくることがあるのでね。

わたしは最近ではめっきりミステリをあまり読まない人なんですが、「こりゃイッポンとられたよー」という読後感でした。ミステリ好きの人がこのパターンの物語が良いのか悪いのかは、わたしにはわからないですが、良いですよ!この結末。最終章の途中を読んでいるあたりから、最初からページをペラペラ戻る感じになるかも。いや、たぶん皆さんそうなります。

そして、最終章で伏線のすべて回収をしてくれる。仮にこの物語を連載小説で第一章だけを読むとしたなら、ミステリラノベかな?という感想で以降わたしは読まなかったかもしれないですね。ただし、最終章まで読んでこの物語が完成する点で、構成としては満足させられました。本の題名、表紙の絵、物語を語る視点、王道のコンビものの探偵風小説…、すべてやられた感じです。

ミステリというより孤独な少女が自立する物語

一方の『ザリガニの鳴くところ』。湿地にすむ少女の成長の物語なのです。生物たちの描写や物語の要所で表現される詩がきれいで、本当に翻訳したの?というくらいきれいな日本語です。翻訳の友廣 純 さんのおかげです。

事件は1969年にチェイス・アンドルーズという男が湿地で死亡したのが発見されるところから始まる。その事件には「湿地に住む女性」が関わっている可能性があるというところから捜索がはじまる。それから20年前へ遡り、その「湿地に住む女性」が湿地で孤独に生活していた少女時代から大人への成長を描きながら、事件の1969年に向かっていく。2つの時代を行き来しながら、事件への真相に近づいていくという構成です。

少女の成長と、少女の周囲の人たちと関わりが物語の肝でありながら、最後の最後まで読まないと解らないようになっている。当時のアメリカの時代背景を物語の後ろ側にチラチラと明滅させながら語られていく。湿地に住む主人公の少女は白人貧困層、仲の良い雑貨屋の店主は黒人で、湿地から離れた繁華街や住宅地には当時のアメリカの中産階級が住んでいる。この中産階級の子供たちが黒人の店主に物を投げつけても、黒人の店主は怒ることもできない時代。このような時代背景も主人公の生い立ちに影響していく。

著者が生物学者であるため、湿地の生物たちの生態の描写にも注目して読みすすめたいところ。さらに「ザリガニ」「カマキリ」の生態が物語の隠喩として扱われている(はず)なので、結末を知った読後も満足できる。(すこしネタバレかな?)

どちらも予備知識なく読んだら良いと思うオススメ小説です。