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本、映画、ドラマをとりとめなく語るブログ

文庫本の厚さを感じさせない面白さ『ウィッチャーⅣ ツバメの塔 』

「ウィッチャー3 ワイルドハント」はニンテンドーSwitchでウィッチャー3コンプリートエディションが発売。「ウィッチャー」は12月にNetflixでドラマが配信決定。などとウィッチャーワールドがジワジワと展開中。

その原作、ウィッチャーの第4巻『ウィッチャーⅣツバメの塔』を紹介します。5巻で原作シリーズは終了(既刊)です。

1巻から順をおって原作シリーズを紹介してないのになぜ4巻を紹介するのか? それは、物語の最後のひとつまえ、つまり結論にむかう一つ前の章は何かと重要なためです。 アヴェンジャーズもインフィニティウォーがスターウォーズも帝国の逆襲が、という具合にです。あまり説得力がないように聞こえますが、この分厚い4巻を一気に読でしまったほどの没入感です。

さて、ウィッチャーのゲーム版をプレイした人達が小説を読破すると、なおのことウィッチャーの世界が広がるのはもちろん。ゲーム中において、主人公のゲラルトが、他のキャラクターとの出会いを懐かしんでる場面を見て頭の中で???となっていても、原作シリーズを読んでみると(ゲームより前の出来事)ここで会っていたのか!と、発見がたくさんあり、楽しめるわけです。 では、ウィッチャーのゲームをプレイしていない人も原作小説をたのしめるのか?

今回紹介するこの4巻は、終盤あたりまで、回想という形をとって物語がすすみます。(注:1〜3巻はそのような形式でかたられてはいません) たとえるなら、PS版ゼノギアスの2枚組のCDの2枚目に進めたら突然モノローグで始まった感覚に近いですね。(RPGゲーム好きな人しかわからない表現ですが‥) この小説はモノローグではないですのですが、 もうひとりの主人公シリが命からがら逃げて傷つき倒れていたところ助けられ、助けた森の隠遁者との会話でなぜこのような満身創痍の状態になったかを回想という形で語られていきます。

実は3巻の最後の方でシリは楽しく仲間と過ごすことが描かれていたんです。それなのに4巻冒頭から生きるか死ぬかの状態から発見されると、読んできた読者はかなり面をくらうわけです。なんじゃこの表現方法は?と驚きます。 それでグイグイと物語に引き込むという作者の意図なんでしょうね。わたしもまんまとハマりました。すごい。

さらに、 この巻の表紙をめくってすぐ、登場人物名を紹介する前の冒頭の文章が、

”真夜中 ダンデレに賊が来た ウィッチャー少女をつかまえに 村をぐるりと取りかこみ バリケードで封鎖した だまし討ちにしようとするも もくろみ すべて無に帰した 朝日が凍土を照らす前 三ダースの賊 殺された"

と書かれてあります。 それから、前述したシリと隠匿者の語りの場面が描かれていきます。そしてこの回想がおわり、満身創痍になったシリがその後回復し、敵への復讐劇が描かれます。

わたしは初見でこの冒頭の文章が何を意味してるか不明でしたが、読み直すと復讐劇の一旦をになっている文章だとわかってきました。ずたぼろになったシリが、復讐するということが物語の冒頭にネタばれしているのに、読みすすめないと、そこまでわからないんです。 つまり、この巻はシリという主人公の復讐劇であることが、明確に記されていて、初見でわかる人は、ではどのようにずたぼろから復讐を果たすのか?が、この小説の面白さになってくるわけです。 この描き方もエンターテイメント性があってたまらんです。 いままでこんなに物語と世界観にに没入させてくれる作家はいたかな?と考えてました。 ちなみに、原作者アンドレイ・サプコフスキという作家はポーランド出身です。ポーランド人作家はスタニスワフ・レムしか知らなったのですが、おかげで好きなポーランド人作家は二人になりました。(レムの「ソラリス」はスゴすぎて読んですぐ2週めに入りましたがw)

その他にも登場人物たちのヒストリーもわかってくる本巻なので、ウィッチャーというゲームをプレイしていなくても、なんとか1〜3巻まで読んで、この重要な第4巻までたどり着いて欲しい。そのあと、残るは最終巻だけです。

ウィッチャーはおとな向けのファンタジーで、モンスターや魔法やももちろんでてきます。モンスターもやられるだけでなて、やけに人間らしいセリフをはいて憎めない。さらに、登場人物たちの思惑と行動が複雑に絡み合って、物語りがすすんでいくのはドラマゲームオブスローンズさながらなので、群像劇タイプの物語が好きな方へはかなりオススメです。