働くこととはなんだろう? 哲学者が哲学的な表現ではなく、一般人にわかりやすく、現在の労働についてと、これからの労働について語ってくれている本です。
こんにちの労働は、個人主義の出現によって、自分らしい自分になるという義務が課されたために、自己を創出するツールになっていると著者は言っています。
要は自身のアイデンティティに気づく手段だということです。一昔前の労働は例えば工場などの生産ラインで、何かの部品を毎日作りつづけるような場合、そこでアイデンティティを見つけることは簡単ではないと思いませんか?見つけることができる人もいるでしょうけど、それはかなりハードルが高そうです。
本書ではこのようなことを書いています。 ❝有意義な人生を送るには、しかるべきことがらに、それも可能であればしかるべき相手に気づかいをしめさねばならない。あなたの気づかうことがらが、あなたの人生に目的をもたらす。そのことがらを本当にきちんと気づかっていれば、そのふるまいのうちにあなたがどのような人間であるかが表現されていることがわかる。つまり、なにかを気づかうことで、自身のアイデンティティに気づくことができるのだ。❞
さらに、「気づかい」の対象はなんでもよく、人でもことがらでもいい。「気づかい」を通じて、人生に意義とアイデンティティをもたらそうと思うなら、その「気づかい」をもたらす対象は惹きつけられるものでなければならないと主張しています。 ここでいう「気づかい」とは自分の人生の時間をかけて、向かい合うという意味だと思います。著者の主張どおりなら、仕事についても、もちろん「気づかい」の対象で、しかも自分が惹きつけられもので、さらにアイデンティティををもたらすものでなければならないということになります。逆に仕事に意義がもたらされないときは懊悩するとも言っています。
「仕事をする意義」以外にも、「仕事とレジャー」や「給料について」、テクノロジーが進化することでなくなる仕事に悲観するだけでなく、あらたに創造される仕事についても言及しています。仕事をすること自体に悩みが生まれている人におすすめです。