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今年一のドラマNetflix『クイーンズ・ギャンビット』は観たほうがいいよ

今年のドラマランキングがあるとしたら、このドラマが1位確定でよいのではないか?IMDb の評価は8.8、ロッテントマトの評価のトマトメーターは100%(どちらも現時点で)と堂々の高評価ドラマであるNetflixのリミッテッドシリーズ『クイーンズ・ギャンビット』。

1960代のアメリカが舞台で、孤児院で育った少女エリザベス・ハーモンがチェスの世界で活躍していく物語。原作は日本未翻訳で実話ではない。 Netflixには珍しく凄惨で殺伐としたシーンはありません。ただし、薬とお酒に溺れるシーンはあるので、R15+になっています。

このドラマにハマるポイントとしてあげられるのは、何個かテーマを取り込んでそれを7話に落とし込んだところでしょうか。いくつかのテーマを主に感想を述べてみましょう。

弱さと脆さを持った天才主人公

主人公のエリザベス・ハーモン(ベス)は母親とトレイラーハウスで生活していた。9歳の頃母親は死亡し、キリスト教系の孤児院で暮らしていくことになった。そこで少女はチェスと精神安定剤に出会う。用務員に教わったチェスはメキメキと上達していく。さらに夜な夜な精神安定剤を服用すると、天井にチェスの盤面を観ることができ、自己鍛錬していく。それゆえチェスの上達ともに、精神安定剤への依存度も高くなっていく。 大人になると依存度は高くなり、安定剤の他に過度のアルコールや喫煙など、違法ドラッグとは異なり簡単に手に入りやすい習慣性の化合物に依存していく。一方で、チェスは負けなしで大会で勝ち続け、若くしてて有名なプレイヤーになる。 精神的な脆さも垣間見せながら、チェスでは強すぎて他者を圧倒していく。それがこのドラマの見どころのひとつであろう。

女性の活躍

1960年代のアメリカは男性は外へ働きにでかけ、女性は家で家事という父権的な社会であった。現代から見ると古臭く感じる。そのため、そのような社会で主人公が活躍していくことを描くことで、現代から客観的に眺めたわたしたちは、当時の社会背景に当てはまらない我が道を進む主人公に共感しやすいのかもしれない。 ここ数年、海外のドラマや映画、ゲーム、小説はどれも、テーマとして女性が活躍することが当たり前になってるのであえて言及するまでもなし。ただし、主人公が男性だったらはたしてこのドラマを観ただろうか?

次々と相手を打ち負かす爽快感

このドラマではチェス用語がたくさん飛び交っているが、とくにチェスのルールを知らなくてもなんの問題なし。序盤は無名の少女が、男だらけのチェスの大会へ飛び込んで、次々と居丈高な態度の人間を倒すシーンは爽快すぎる。さらに打ち負かされた男たちが、その後の彼女をサポートしてくれるという、少年マンガのような体をなしているところもなんだか面白い。海外ドラマでは仲間になっても、のちのち裏切ったり、殺されたりと、グチャグチャしてますが、このドラマでは良い意味でそのようなシーンは無い。

華やかなアメリカと病的な側面のアメリ

このドラマで注目して欲しいものは当時の華やかなファッション性。それは主人公のベスの着飾るファッションはもちろんのこと、加えてベスの自宅にあるミッドセンチュリーの家具のセンスが良すぎて、素人目には「いやーオシャレだわ」という感想しかでないです。そして、その華やかさと対比して描かれているのが、当時の病んでいるアメリカ。 たとえば、主人公が孤児院にいるときには精神安定剤を与えられる。そして引取られた先の養母は、タバコにアルコールに依存気味になっている。大人になった主人公もワインをラッパ飲みし、子供のころからの安定剤への依存症からなかなか抜け出せない。さらに、チェスで有名になった後に再会した高校時の同級生は、ファッショナブルな服で身を包み、赤ん坊をカートに乗せているが、そのカートの下にはアルコールの瓶がごそごそと垣間見せる。このことから、このドラマでは少なからず何かに依存している人々を描いている。何故それを描いたのか?それは当時に限った話ではなく、何かに依存している人々はそのまま現代でも通じていて、それもテーマにしたかったのかなと思う。仮に主人公だけを依存症の設定にすると、「主人公だけ」が特別になってしまうのと、依存症のためにチェスの能力が授かったと見られなくもない。だから、主人公も数多いる依存症のうちのひとりとすることで、主人公のような天才であろうが、ごく一般的な生活をしている人々であろうが、自分の置かれる状況によっては依存症に陥ることがあり得るということを伝えたかったのかもしれない。 余談だか、処方薬の依存症のNetflixのドキュメンタリー『テイク・ユア・ピル:スマートドラッグの真実』も合わせて観ると、アメリカでは今も昔も薬物依存症について深刻な印象を受ける。

何はともあれ

1話を観終わったらたぶんイッキ見したくなるでしょう。リミッテッドシリーズなので、ワンシーズン限りなのが良かったのかもしれません。冗長部分が少なく物語の展開のテンポも良かったです。 主人公を演じるのはアニャ・テイラー=ジョイ。今作が出世作になるでしょうね。綺麗さも演技も素晴らしかった。さらに脇役陣も「あのドラマ」や「あの映画」にでてた人達が立派な大人になって活躍してますから、役者名をググッてみるとより深くこのドラマを楽しめますよ。