一蹴 本とか映画とかドラマとか

本、映画、ドラマをとりとめなく語るブログ

Netflixドラマ『真夜中のミサ』はホラーが苦手でも楽しめるホラー作品

ホラー作品が苦手だけど、気になるホラードラマや映画ってのがよくある。Netflixリミテッドシリーズのホラードラマ『真夜中のミサ』もそのひとつ。わたしの場合コジプロの小島秀夫監督が絶賛していたツイートを見かけてから、気になりはじめて、観るか迷っている間に時が経ち、忘れかけたころにイッキ見して感動し、この記事を書くべく筆とってるところ。

わたしのようなホラー作品を最後まで観ることが苦手な方や、ホラー作品を初めて挑戦する方にはオススメの作品だと思う。理由としてらホラー作品でありながら、ヒューマンドラマや社会派ドラマとして観ることができ、観劇後に深く考えさせられる物語になっているから。ただし、血とグロ描写はあるので耐えましょう。

あらすじ

若い神父が、孤島にあるクロケット島の教会にやってくる。その後、島の住民たちは、奇跡や奇怪な出来事を目の当たりにする。奇跡を目の当たりにし、神父を妄信する者がでてくる。訝しく思う者もいるがそれは少数で、教会のミサに参加する住民は以前より増えていき、いずれ島の住民たちはある運命を背負うことになる。

家族と宗教

この物語はキリスト教の聖書もとに救済、奇跡、信仰、愛、懺悔など宗教的な内容含むホラー作品になっている。聖書の一節とかよくわからない、または苦手という方はそんなことは気にしなくても良いでしょう。聖書に詳しいのならより理解できると思う。

島の住民は大きく分けてカトリックムスリム無神論者がいる。カトリックが大勢を占めている。ただし住民の信心深さは人それぞれ。主要人物のライリーは島を出て都会に住み、羽振りもよかったが、飲酒運転で少女を轢き殺してしまい、刑期を終え島に帰ってくる。ライリーの母は信心深く、帰ってきたライリーを受け入れてくれる。たがライリーは家族と違い形而上的なものは信じていない。それでも島を出て、また帰ってきた身分の自分を受け入れてくれる家族に感謝し、教会へも顔をだすようになる。

一方、赴任して間もない保安官のハサンは敬虔なイスラム教徒で、この島ではマイノリティのため苦悩している。唯一の家族のハサンの息子はクリスチャンである多数の住民から影響を受けていき、ハサンの悩みは深くなる。このように、宗教と家族との絆が絶妙に絡み合ってたヒューマンドラマとなっている。もちろん、聖書の内容の一部がこの物語で語られ、ホラー作品としてと結実していき、観終わると信仰や救済についてこの物語で描きたかったのがよくわかる。ただしこれは監督のマイク・フラナガンが描いた表向きのテーマだったことに気づくことになる。

分断された現実社会への箴言

監督フラナガンがこのドラマで描きたかったもうひとつのテーマには狂信による排他主義がある。登場人物のヴァバリー・キーンは特に熱心な信者で、神父が島に到着してから一貫して、この物語の妄信主義を体現している。信仰は美しさや赦しを与えられるが、ときに自分とは違う信仰の者を抑圧する道具にもなる。そのことはドラマ後半に描かれている。

マイノリティを弾圧するテーマは今も昔もよくあるものなのにあえてこの内容をこの物語で語ったのは、直接的な現代社会へのアナロジー(暗喩)としてフラナガンは語っているからだろう。フラナガンアメリカ人で、現在進行中のアメリカ内の分断にはじまり、家族さえも断絶していく世相について語りたかったのかもしれない。

「多くの人は自分が見たいと欲する現実しか見ていない」と、かのカエサルは大昔に述べた。皮肉にも現代こそがこの言葉がしっくりくる時代になっている。自分が求めてる情報がお手元のPC、スマホタブレットで簡単に大量に得られる。そんな手軽に大量な情報はいとも簡単に人々は支配され、自分が望むことが正しかったと納得し、さらに自分の求めることをら妄信していく。それ以外を信じるものは、陰謀だフェイクだと罵り、悪魔とでもいいたいかのように拒絶する。そして人々は分断されていく。そんな現状を危惧していることが、アナロジーとして『真夜中のミサ』で描かれている。さらにこの作品で神父が〈天使〉と呼ぶ「人間ではない者」が登場する。まったく天使とは呼べない容姿なのに神父は〈天使〉と呼び続ける。天使よりも悪魔に近い容姿のそれを天使と呼ぶなら、われわれ人間は悪魔なのかもしれないと、逆説的な皮肉を言っているように思える。

まとめ

このように『真夜中のミサ』はホラー作品とはいえヒューマンドラマと現代社会へのフラナガンなりの訴えを上手く融合させた物語となっている。ホラー作品が苦手でもこの2点を注視すると、怖さより感動が上回ると思う。これはホラー初心者でも大丈夫な理由。だたし、血とグロ描写はあるので、うーん、それは受け入れて。

Midnight Mass: The Art of Horror