一蹴 本とか映画とかドラマとか

本、映画、ドラマをとりとめなく語るブログ

綺麗な図版で知的好奇心を満たす『ドーキンスが語る飛翔全史』

ドーキンスの語る「科学」はいつもわかりやすい。たまにその語りが伝えたい内容のテーマから横にそれることもあるが、それも知識として無駄のないものなのだ。そんなドーキンス節が味わえるのが『ドーキンスが語る飛翔全史』である。


どんな本?

『ドーキンスが語る飛翔全史』(原題: "The Magic of Reality: How We Know What's Really True")は、イギリスの生物学者であり科学者リチャード・ドーキンスによる、科学的方法を使って飛ぶための基本的な概念を解説し、自然界の「飛ぶ」現象に対する科学的な説明をおこなった書籍である。
さらに、この書籍は「飛ぶ生物」だけが対象なのではなく、植物、恐竜や鳥類、地球や宇宙、進化、遺伝、科学的探求、そして天使や妖精、神話や迷信などについて幅広い科学的トピックを扱っているのだ。

この本の科学的なトピックとは

ここでは例として本書で語られているムクドリの群れについて取り上げてみる。
鳥には機動性が必要で、その理由のひとつに、群れをなして飛ぶときに隣とぶつかるのを避けなくてはならないことがある。群れをなす理由はたくさんあって、最も重要なことは、数が多ければ安全でタカやワシに捕まれる確率が低くなるということである。空に舞う何十万といるムクドリの群れを眺めていると、何かの意思があるような動きに思われるが、そうではない。それぞれの鳥は単純なルールに従いすぐ隣の鳥に目を配っているだけだという。その結果として他の個体との協調が出現するのだと。
この現実を理解するために、これを模倣するコンピュータによるモデリングも開発されたという。あるルールを組み込んだ1羽の鳥を何百とコピーしてコンピュータに放つと、コンピュータ上に本物そっくりの群れが出現する。
このことについて、ドーキンスは次のように語っている。

この「出現」の原理は生物学全般でとても重要である。複雑な器官や行動は、多くの小さな要素それぞれが単純なルールにしたがうときに出現する。複雑さはもともとあるものではない。出現するのだ。

知的好奇心を満たしたい方にオススメ

前述のようなドーキンスの科学的な知見に基づくトピックが、本書には所狭しとちりばめられている。
さらに本書は、イラストと図版を多用し、科学の面白さと不思議さを伝えることに力を注いでいる。挿絵のほかに、数ページに一度にイラストが文章の脇にも添えられているので飽きがこない。『ドーキンスが語る飛翔全史』は、科学的な思考に好奇心がある人や科学的な教育に関心がある人向けのオススメな本なのだ。

『ドーキンスが語る飛翔全史』リチャード ドーキンス (著), ジャナ レンゾヴァー (イラスト), 大田 直子 (翻訳) (早川書房)