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フーダニットの魅力とミステリ『見知らぬ人』

ミステリの中でも、最もオーソドックスに楽しめるのはフーダニット(Who done it?)である。
誰が犯人なのかという一点に絞られた謎解きこそ、このジャンルの醍醐味だ。

犯人が犯行を隠すための複雑なトリックや、精巧なアリバイ工作にはさほど関心がない。
単純に、物語の最後まで「一体、誰が犯人なのか」「共犯者はいるのか」という緊張感に惹かれるのである。
そして、クライマックスで真犯人が明かされた瞬間に「お前が犯人だったのか!」と心の中で叫びたくなるような、そんな読書体験を求めている。

そんな私に、SNS上で勧められたのが、エリー・グリフィスによる『見知らぬ人』である。


あらすじ

舞台は、イギリスのヴィクトリア朝時代の怪奇作家ホランドの邸宅を再利用した学校「タルガース校」。
主人公クレアは、この学校で英語教師を務めつつ、ホランドの研究をしている。

ある日、同僚が殺され、遺体のそばに「地獄はからだ」という謎のメモが残されていた。
それはホランドの短編『見知らぬ人』からの引用である。

やがて第二の殺人が起こり、物語はクレア、その娘ジョージー、そして事件を担当する女性刑事ハービンダー——三人の視点から進んでいく。


読者を惑わす多角的な視点

本作の最大の特徴は、三人の視点が入れ替わりながら物語が進む構成にある。
それぞれが事件を考察することで、読者もまた複数の視点から真相を探ることになる。
この仕掛けが巧みにミスリードを誘い、最後まで犯人を見抜くことを困難にしている。

前述の通り、私は犯人当てに固執する読み方はあまりしない。
むしろ、登場人物たちと同じように、結末まで緊張感を保ちながら読み進められるフーダニットを好む。

もし同じような楽しみ方をするなら、この『見知らぬ人』は強くおすすめできる一冊なのだ。


『見知らぬ人』(創元推理文庫)
著)エリー・グリフィス
訳)上條ひろみ