古代ローマの歴史に心惹かれるのは、なぜだろうか。
カエサルが好き?映画『グラディエーター』の剣闘士やマンガ『テルマエロマエ』の温泉好きローマ人の物語が好き?
それもそうだが、
古代ローマから受け取るのは、現代にも通じる普遍的なテーマ「寛容」の力だ。
古代ローマは、世界史上でも稀に見る「普遍帝国」を築いた。他の民族をただ支配し統治する「民族帝国」でなく、自らの市民権を与え、元老院の議席まで開放した。
これは、征服した民族を同等のパートナーとして受け入れるという、現代の視点から見ても驚くべき戦略だ。彼らは、その土台に「寛容」という利他的な精神を据え、これによって帝国は繁栄を極めた。
しかし、その「寛容」が失われた時、帝国は衰退の道を辿る。キリスト教の迫害を止め、受け入れた後、異民族を排斥するようになったローマ帝国は、やがて滅亡へと向かった。
この歴史は、わたしたちに重要な教訓を与えてくれる。
作家の塩野七生氏の著作『完全版ローマ人への質問』は、この古代ローマの叡智を、現代の我々にわかりやすく提示してくれる。

約20年前に刊行されたものを、完全版として再刊行された本書は、歴史解説ではなく、現代人が架空の古代ローマ人に質問を投げかける対話形式で進む。
その中で特に印象的なのが、「パクス・ロマーナ(ローマの平和)とは何であったのか?」という部分。
パクス・ロマーナは、強固な防衛力と安定した経済力によって支えられていた。
• 防衛力: ローマ市民でない者にも兵役を終えれば市民権を与え、莫大な退職金を用意した。これにより、被支配民族はローマのために戦う力を惜しみなく提供した。
• 経済力: ローマの通貨は帝国全土で通用する高い信用を得ていた。また、ローマ街道は軍用道路として整備され、通行料は無料。これにより、商人は安全かつ自由に交易することができた。
さらに、ローマ帝国は統治に必要な人材を、本国出身者に限定しなかった。属州出身の優秀な人材を積極的に登用し、彼らを「ローマ化」していったのだ。
この寛容な政策は、カエサルの暗殺事件にも深く関わっている。ブルータス一派がカエサルを殺害したのは、彼が独裁者であったからという理由だけではない。
それは、属州出身者の登用を推し進めるカエサルに対し、本国出身者だけで統治しようとするブルータス派の、思想の対立でもあった。カエサルは殺されたが、その意思は後継者のアウグストゥスに引き継がれ、パクス・ロマーナの成立へと繋がっていく。
歴史を振り返ると、近代の植民地政策は「支配」であり、現代の移民政策は「労働力」の確保に偏りがちだ。古代ローマが示した「寛容」と「共生」の成功例を、わたしたちは学ばない。だから人間の歴史は面白いのかもしれない。
もしあなたが古代ローマに興味があるなら、この本はわかりやすく教えてくれる。
『完全版 ローマ人への質問』
塩野七生 文春新書
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