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#5「若い読者のための第三のチンパンジー」 を読みました

 

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『銃・病原菌・鉄』と言えば、本が好きな人間にとっては、「ああ、あの本ね」と返って来ます。それ読んだ?と聞くと「…」な人が多いのでは?なぜなら、私もそのひとりだからです。みごとに積読しています。いや、本当に買ったのか?と思うほどです。いつかは読もうとしてるんですよ。本当です。

さて、前述の著書ジャレド・ダイアモンドは「銃・病原菌・鉄」のほか「文明崩壊」「昨日までの世界」と上梓しています。そしてどれも、上下巻に分かれていて、ページ数多め…。私みたいな半端な読書人にとってページ数が多いのは辛いですね…。それでも、ダイアモンドさんの世界に触れたい!NHKのEテレの番組も興味あったし!すこしでも教養人かぶれになりたい!そんな方にオススメしたいのが、「若い読者のための第三のチンパンジー」という本です。文庫版で発売されたのが、約1年前。ダイアモンドの著書のすべてのエッセンスがこの本に読みやすく凝縮されていると、裏表紙にも書かかれています。それに惹かれて私も手に取ってみました。 印象としては読みやすく、最近だと「サピエンス全史」を一読している方は興味がわくのではないでしょうか?(出版順序としては逆ですけど)

 

この本のテーマは「人間とは何か?」です。それも宗教、哲学、科学的な側面からでなはなくて、ダイアモンドさんの専門分野の人類進化史からみた「人間」が何かを見つめた内容になっている印象を受けます。さらに本の題名にもある第三のチンパンジーと言っているのは、高等霊長類のなかでもボノボチンパンジー、ヒトは近縁にあたり98.4%遺伝子が同じで、人も3番目のチンパンジーという意味です。ただし、遺伝子的にはほぼチンパンジーであっても、なぜ人間だけが、まったくもって異なる進化を遂げたのか?ということが記されています。

 

著者は「人間とは何か?」という問いに類人猿からのヒト科の進化の過程や、生活や文化、文明の発展、をなぞりながら説明していきます。その内容をまとめる気はここではまったくないので、是非本書を読んで、我々サピエンスがどうやってここまできたかどっぷり読み込んでほしいと思います。

 

いくつか気になった本文を引用します。

❝この地球に生存する何十億という種のうち、たったひとつの種だけが無線機を発明しようという傾向を示した。しかも、その生物であっても自分の700万年におよぶ歴史のうちの、7万分の6万9999はそれに手をだすことはなかったのである。❞

無線機を作り出すには手先の器用さや知性を必要とするが、その2つの能力を持つものはヒト以外にチンパンジーボノボだけども、我々より繁栄しているとはいえない、と本書で述べています。さらにそのヒトであっても、科学の発達については人類の歴史にしてはごく最近のことであるということ。人類の歴史にあてはまめるとほんの一瞬にあたり、その期間にこれだけのテクノロジーが発達したということです。

 

さらに著者は、ヒトの歴史のなかで、なぜ高度な文明が滅びたかについて述べています。

❝文明のことごとくが没落したのは、増え続ける人口がそれぞれの環境を圧倒してしまったせいなのだろう。歴史の本では王たちと蛮族の侵入について長々と語られている場合が少なくないが、結局は森林破壊や侵食のほうが、人間の歴史を形づくるうえでははるかに重要な役割を果たしていたようである。❞

人類の歴史からして、高度な文明がそれよりも低い文明を滅亡してきたことは、我々は歴史の時間で学んできました。ただし、高度で大きく栄えていたも文明が突如として崩壊する理由もあって、それが土地の侵食や環境破壊によって引き起こさたのであれば、これは過去に学ばなければならないと、ペトラやイースター島などの文明を例にとって著者は言っています。

 

環境保全、人口抑制、資源保護の社会問題について、個人的には書籍やネットでの記事、ニュースは将来の悲観さをとりだたされやすいと感じるし、「このままではいけない」という印象が刷り込まれやすいと感じています。だけれども、ダイアモンドさんは悲観的ではなく、むしろ心強い言葉をの残しています。

❝私たちが置かれた状況は決して希望がないわけではないと私は信じている。こんな問題を生み出したのが私たちだけであるなら、その問題を解決できる力も私たち自身にしっかりと備わっている。地理的に遠く離れ、また過去のことであろうと、種のほかの仲間の経験から学びえることができるという点において、人間は唯一の動物なのだ。❞

 

この本はダイアモンドさんの世界のエッセンスをちりばめたものです。「人間とは何か」という問いの答えが出ているわけではないと思うのですが、「なぜここまで人間が進化できたのか?」という問には答えてくれていると思います。さらに、今後「人間」の文明が崩壊するのか、さらに発展するのか、危惧してる部分と期待をしている部分も示唆してくれています。加えて、本書解説にも書かれていますが、本の題名に「若い読者のための〜」となっているように、歴史を学校で学ぶ世代が、有史以前にどのように人類が歩んできたのか?という学びにピッタリだと思います。

 

この本の著者 ジャレド・ダイアモンド アメリカ合衆国の進化生物学者生理学者、生物地理学者、ノンフィクション作家 (ウィキペディアより)