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本、映画、ドラマをとりとめなく語るブログ

#6 「プリズン・ブック・クラブ」を読みました

「刑務所で受刑者達の読書会を開催するけど行く?」と聞かれて、行きたいと思いますか?この本の内容は、勇気ある著者が友人の誘いのボランティアで刑務所での読書会に参加し、受刑者達との交流を描いたカナダにある刑務所での読書会の1年を綴ったノンフィクションです。

まず、この本をオススメしたい人は自己紹介のときに趣味はなんとなく「読書」と言ってしまう人です(私も場当たり的に書きます)。なぜなら、この本を読んで受刑者たちの読書能力を目のあたりにすると趣味に読書と言ってるのが恥ずかしくなるからです。(ですが、本気の本好きはますます読書したくなります)

著者は強盗未遂の被害にあったことがあるので、一回目の読書会では、当然ながら怯えて、ほとんど読書会の内容が記憶にないほどです。しかし、恐怖を感じつつも、読書会のメンバーと少しずつ交流していきます。さらに興味深いのは、読書会に参加した受刑者は、読んだ本に対する自分の意見をしっかり持っていて、読書会でお互い言い合うことで、意見が違う持ち主の話を聞けるようになり、自分の犯した罪の意識も認識していくのです。そもそも、強盗や殺人、薬物密売、ギャングの一員のだった人たちが、読んだ本ついて議論するのってすごと思いませんか?

著者は読書会で、受刑者たちの経験からくる「ならではの」感想を聞かされ、読書会を重ねていくと、受刑者の中にも本が好きで、真摯にその本の内容に向かって 自分の意見を発言することを目のあたりにします。さらに読書会のメンバーから読書会の大使を任命して、読書会に参加者を増やしていこうとしたり、ろくに読んでこないで読書会に出席する受刑者には、もっと読みやすい本を選定するなどし、著者の読書会への熱意も増してきて、新たな参加者も徐々に増えていきます。そして、読書会のメンバーのうち、軽警備施設にうつされた者は、自分たちで読書会を立ち上げたいと著者に相談してきて、読書会で受刑者の行動まで変えいくようになっていくわけです。著者は最初のころは恐怖もあって読書会の記憶すらなかったのに、なんと仮釈放中の受刑者と喫茶店で会って近況を聞き出すまで成長しているのです。

この本を読んで、読書の力ってすごいなーと思う反面、数ページで読みたくなくなる本もあるので不思議ですね。巻末にはこの本で取り上げたブックリストが載っています。中には未邦訳のもあるので翻訳が出ないかなーと思ったり。余談ですがこの本の第一章でコーマック・マッカーシーザ・ロード」を読書会で取り上げたら受刑者たちで盛り上がったという描写があるのですが、受刑者は好きそうだなと、それはすごく納得してしまった。