三体Ⅱ
昨年にSF小説『三体』が発売され、わたしはTwitterに「ハードSFではないから読みやすいよ」みたいなツイートをした記憶があります。ですが、今作『三体Ⅱ 黒暗森林』はみごとにハードSFです。宇宙物理学や量子学を使った表現がちらほら出てくるので、詳しくない方は脚注を読んで理解を深めるのがいいかと。
さて、今作はいよいよ三体惑星系の艦隊が太陽系へ向かってやってきます。(わからない方は必ず『三体』を読みましょう)それに先行して、三体惑星の探査機が太陽系に向けて発射されていて、それを鹵獲するミッションが今作の見どころ(読みどころ)のひとつ。この描写が素晴らしくSF映画の様。 この『三体』シリーズの大きいテーマのひとつに文明のある他惑星とのファーストコンタクトがあります。昨今のSFだと「フェルミのパラドックス」を取り上げざるをえないらしい。本書ではこれをうまく物語に組み込んで説明されています。
ここで「フェルミのパラドックス」を簡単に説明すると、広大な宇宙のなかに文明が勃興していてもおかしくないわけですが、なぜか他の文明とのコンタクトがれていない、というもの。その理由にはいくつかパターンがあるのですが、中国では本書の解説によると『三体』の「フェルミのパラドックス」の説明がスタンダードのようです。
本書での「フェルミのパラドックス」のアプローチは、文明における短期間での技術革新の爆発を加味しないといけないため、文明があると確認したら直ちに破壊しないといけない。ということ。なぜなら、その文明にたどり着くまでに、技術革新の爆発によって自分たちの文明より高度になっていた場合、破壊すら困難になってしまう。だから、暗黒の宇宙のなかで、身を隠さないといけない。というものです。ま、小説のなかでは三体文明に見つかって、攻め込まれてるんですけど。
「フェルミのパラドックス」はわたしが最近読んた本ではデッド・チャンの短編『大いなる沈黙』で扱ってたのですが、それはまた別のアプローチで説明していますので、興味がある方はどうぞ。
その他、作者が『銀河英雄伝説』好きとのことで銀英伝のヤン・ウェンリーの名言が引用されたり、『幼年期の終わり』などの過去の大作SFのマージュ的な引用ネタなどは今作も健在なので、そういうのを探す楽しみもあります。
上下巻をあっという間に読んでしまった。とくに下巻入ってから面白くなりすぎで、最後に伏線回収してくれている。そして、読み終わると、救われた気持ちにしてくれるので、3度くらい美味しいSF小説なので、ぜひ読んで欲しい。
(『三体Ⅱ黒暗森林 (上)(下)』(著)劉慈欣 早川書房)
怪獣8号
『怪獣8号』は毎週ジャンププラスで配信されている漫画です。7月20日現在で3話まで配信されています。3話までですが、毎週読みたくなる!というのが感想。 怪獣が倒されたあとの処理をする清掃的な仕事をする主人公が、怪獣になってしまうというのが物語のスタート。しかも主人公は怪獣を倒す仕事への憧れを捨てきれず、今の汚い臭い怪獣の後始末をしている。そこで怪獣になって強力なちからで、怪獣をぶっ倒すことになってしまった。 このあとの物語の展開が楽しみの漫画です。 怪獣好きはほんとにオススメです。