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「社会科」の苦手を和らげるために『世界史と地理は同時に学べ!』はどう?

はじめに

我が愛娘は「歴女」である。大河ドラマは小学校4年生の頃に一緒に観ていた『麒麟がくる』から毎年欠かさず、いや毎週欠かさず視聴しており、NHK公式ガイドブックを手元に置いてドラマを観ている。

今年、令和6年の大河ドラマ『光る君へ』も大好物らしく、これに伴い最近読んでいる本は『源氏物語』関連本である。中学生になってから、社会の「歴史」が好きなようだが、「地理」は苦手なようで、授業が「地理」の内容になると渋い顔をする。

親としては「地理」に少しでも興味を持ってもらいたく、ネットや本屋で探していると良い本を見つけた。それが、社会科教員であり、ムンディ先生こと山﨑圭一氏の著書『世界史と地理は同時に学べ!』である。

歴史と地理を同時に学べる書籍は他にもあるが、著者のYouTubeで世界史を分かりやすく学び直すことができたので、この本も平易な文章で分かりやすいだろうと思い手に取った。


歴史にも地理的理由がある

この本は、世界の各地域ごとの歴史を古代から現代まで取り上げており、例えば、なぜギリシア人が地中海沿岸に多くの都市を築いたのかを解説している。著者は、歴史的な背景だけでなく地理的要因にも触れており、

ギリシア人由来の都市には、ひとつの傾向があります。それは、小高い丘に取り囲まれた比較的狭い範囲に街を作ることです。(中略)これは、ギリシアが海での交易を重視していたためです。山地が海にそのまま落ち込むような地形だと、船が直接横付けできるため、それが天然の港になるのです。

と述べている。

つまり、ギリシア人が築いた植民都市は山の上から見下ろせるような傾斜地に作られ、その地形が船の停泊に適している場所に築かれていたのである。現在も観光都市として知られるマルセイユ、モナコ、ナポリ、ニースなどが、そのような地形に作られた都市である。

さらに、アジア地域のトピックでは、中国の歴史が東西ではなく南北に分かれてきた理由についても触れられている。中国の歴史上、東西に分かれた王朝はなく、常に南北に分断されてきた。五代十国時代、北魏・宋の南北朝時代、金・南宋の時代、魏・蜀・呉の三国時代はすべて、南北に分かれた王朝が勃興している。

著者はその理由を説明しており、

この疑問を解くカギは気候にあります。中国の降水量分布を見ると、北は雨が少なく、南は雨が多いという特徴があります。降水量が約1000mmの地点を結ぶ線を引くと、東は淮河、西は秦嶺山脈を通ります(これを秦嶺・淮河線といいます)。

と述べている。

この降水量の違いにより、稲の生育が可能かどうかが決まり、秦嶺・淮河線の南では稲作が盛んで、北では小麦の栽培が主流である。このような気候や食文化の違いが、南北で異なるアイデンティティを生み出しているのだ。

このように、歴史と地理が織り交ぜられて解説されているため、どちらかが苦手な人でも楽しめる内容となっている。本書は単なる教科書的な知識を伝えるだけでなく、歴史的な出来事や地理的な背景を結びつけることで、学びの楽しさを教えてくれるのだ。
歴史や地理は、単体では時に難しく感じることもあるが、両方を同時に学ぶことで理解が深まり、より立体的な視点で物事を見ることができるようになる。

例えば、地図や歴史年表を見るだけでは捉えきれなかった世界の繋がりや、人々がどのように自然と共存し、地形を活かして文明を築いてきたかが具体的に理解できるようになる。また、著者の平易でユーモアのある語り口が、堅苦しい内容を一層親しみやすいものにしており、子どもから大人まで幅広い世代にとって役立つ一冊となっている。

おわりに

この本を通じて、歴史の流れや地理的な特徴がどれほど深く結びついているかを感じ取ることができれば、苦手意識を持っていたとしても、その分野に対する興味や理解が広がること間違いなしだ。親として、娘が「地理」にも興味を持つきっかけになってくれればと期待している。

『世界史と地理は同時に学べ!』
著)山﨑圭一 〈SBクリエイティブ〉