ジーン•ウルフの作品を何か読みたいんだか何がいいの?と聞いてみたら、誰かが『デス博士の島その他の物語 』をオススメしてきた。タイトルとカバーとレビューを見ただけで遠慮してしまって、もうちょっと軽めの作品をと希望した回答が『書架の探偵』だった。
世界設定とあらすじ
『書架の探偵』というくらいなのでミステリものなのだが、SF要素満載で、なんせ主人公のスミスは過去に作家として活躍していた人間の複生体という設定だ。複生体とはクローンみたいなものだと認識でよいが、本人は過去の記憶があるということなので、脳神経以外がクローンなのかもしれない。そうなると『攻殻機動隊』の義体化に近いものかも、と思ってしまう。 作家の複生体のスミスは図書館に暮している。「蔵書」ならぬ「蔵者」といわれている。そこに裕福な家の令嬢コレットがある依頼をしたく蔵者のスミスを借りていくのだ。その依頼は不審な死を遂げたコレットの兄が、スミス自身が生身の人間だったころ書いた小説『火星の殺人』を彼女に託したからだった。ここから書架の探偵スミスの物語が始まるのだ。 ネタバレしない感想
始まりはフィリップ・マーロウに依頼しに来たのかのようなハードボイルド調だったと思えば、中盤はSF好きはワクワクする展開になる。しかし、SF調になった時点で、ミステリ好きには納得できない方が一定数でてくるのも致し方ないだろう。 物語の展開がこちらの予想に反し裏切ってくる作品という意味では良い。ただし、SFなのかミステリなのかハッキリしろ!という意見もわかる。そこは、ハヤカワSF文庫(青背)で発刊されているのだから、察して下さい。
『書架の探偵』ジーン•ウルフ(ハヤカワSF文庫)