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本、映画、ドラマをとりとめなく語るブログ

#13「全脳エミュレーションの時代 上」を読みました

人間の脳を正確にスキャンし、さらにソフトウェアにアップロードした超知能生命体『エム(エミュレーション)』が生きる時代を論じた本です。この説明だけではSF?と思ういたくなりますが、そうではなく、著者がテクノロジーが進化した100年後の未来の予測(!)をしたものです。

著書は現在のAI技術が汎用型AIとして実用できるには、まだまだ先で現実的ではないと論じていて、それよりを先に脳をソフトウェアにアップロードし体は機械にするか、または脳をソフトウェアにアップロードし、ヴァーチャルの世界で生きていく方が現実的と論じています。シンギュラリティよりも先に『エム』の時代がくるというわけです。ここまでくると『攻殻機動隊』や、グレッグ・イーガンの『ディアスポラ』のSFの世界です。

著者はロビン・ハンソン。NASA人工知能の研究もしていたようです。TEDにも出演してこの『エム』につて語っているようです。→動画

著者は経済学、社会学脳科学、心理学などを横断的に分析して、『エム』についての未来に科学的根拠を基に問いています。ただしSF好きの人でも、難解な箇所もあります。例えば『エム』はソフトウェアなので、コピーをつくることができ、そのコピーを何体か作成し、さらにそのコピーに異なるいくつかの仕事をさせ、あとでそのコピーを合成することで、仕事を効率をはかることができる…など、素人にはとんでも設定に受け取れる箇所もあります。(コピーが経験したデータ量をもとに戻すと本体のデータ量は膨大な負担なのでは?と疑問がでてきたり…。

この書籍は、下巻の解説から読むとよいでしょう。わかりやすく書かれています。

個人的には、この本で書かれている『エム』が活躍している未来は、この現実の延長線上にある未来ではなく、もうひとつの平行世界の延長線上にある未来のことが書かれている、と思って読むと楽しめました。自分の孫の世代が脳をソフトウェアにアップロードした世界に住むと思うとギョッとするので読み進められなくなりますからね(笑)。AIばかりの未来予測はつまらないと思う人に刺激的な書籍です。