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シーズン2が待ちどおしい AppleTV +ドラマ『セヴェランス』

いままで観たことのないようなドラマを教えてほしいと聞かれたら真っ先に教えたいドラマはApple TV+の『セヴェランス』。仕事とプライベートの記憶を「分離」しルーモン産業という会社に勤める人たちを描いたスリラードラマだ。不思議な魅力のあるスリラードラマ『セヴェランス』の感想と見どころを伝えたい。

あらすじ

ルーモン産業に勤めている主人公のマークは分離手術によって、仕事とプライベートの「記憶」を分離して生活している。「会社にいる自分」と「プライベートの自分」は、まったく別の人間といっていいくらい。ある日、ルーモン産業のを突然辞めたピーティと会社の外で会う。会社の外なので、分離手術したマークはピーテイのことを誰なのか知らない。しかし、ピーテイはなぜかマークのことを知っており、勤務先の会社ルーモン産業の謎を知っている素振りで、マークに何か伝えたいようだった。

セヴェランスとは

ルーモン産業の一部の社員はセヴェランス手術を行い、仕事とプライベートの記憶を分離し勤務している。つまり、毎朝家を出て会社に着いてオフィスの席に座ると、すでにプライベートの記憶はなく、仕事内だけの記憶に置き換わっているのだ。さらに記憶以外に人格も変わっていることきる気づく。もっともわかりやすい演出がマークが出勤しオフィスに向かうエレベーター内で分離のスイッチが入り、疲れた顔の猫背な男から、精悍な顔立ちで背筋を伸ばしパリッとスーツを着た男に見えるところだ。セヴェランスの処置をし仕事とプライベートそれぞれが別の人間になっていところを観ていると、なんだか実際の現実社会っぽくもあり、共感を覚えてしまうのも不思議な見どころだ。他の同僚たちも、仕事とプライベートのギャップが映されていくエピソードが徐々に語られていくのが面白い。

みどころ

このドラマを形作る演出、造形美術、小道具が観ている者に不安や緊張、不思議な感覚を与える効果があるように思える。主人公マークが所属するマクロデータ改良部の仕事は、ブラウン管ディスプレイに表示される数字をまとめて画面上のフォルダに入れるだけ。何の意味のある仕事なのかこの時点ではさっぱりわからない。ただ、視聴者の興味と不安を植え付けるには十分な演出だ。他にも登場人物が乗る車は80〜90年代、マークの腕時計は旧ソ連のボストーク社製、懐かしいタイプのヘッドフォンやマイク、カセットデッキが出てきたりして小道具は古めかしい。さらに劇中のBGMも、軽快な曲がかかったと思ば、不安定な曲も流れて、これらの効果が総じて視聴者に謎めいた感覚と緊張を呼び起こしている気がする。

おわりに

『セヴェランス』の監督はベン•スティラー。主演のマーク役はアダム•スコット。と聞いて映画『LIFE!』を思い出す方はかなりの映画好きなはず。私もこの2人の名前を聞いて面白いドラマと確信して見始めた。毎週エピソードの更新が待ち遠しかったドラマで、2022年観たドラマの中でも好印象だった。ルーモン産業と分離手術「セヴェランス」を巡るストーリーでこのドラマの大部分を楽しめるが、マークをはじめとした登場人物たちの物語も人間的な味わいがあって面白い。しかし、その細部が描かれていくのはシーズン1の終盤なので、ドラマの雰囲気が馴染めなくても観続けること。最終話にはシーズン2よ早く!と思いたくなるはず。

仕事とプライベートの人格のみならず、記憶も分離できたら、完璧なワークライフバランスだなと思ったり、マーク達がルーモンで行っている仕事も現代社会の仕事に対する皮肉か?と思ったりと、いろいろ考えさせられて、シーズン1をもう一周観てしまうくらいの魅力あるドラマだ。さらにオープニング曲やBGMが素晴らしいのでAppleミュージックで聴くとなおよろしい。