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『三体Ⅲ 死神永世』やはり凄いSFだった

『三体』三部作が3巻目『死神永世』(ししんえいせい)で完結した。完結したあとも、本書の解説に書かれているように、本国ではファンメイドの外伝小説が生まれたり、Netflixでドラマシリーズの告知もされた。本国で発売されて10年ほど経っても『三体』の勢いは止まらない。 その理由は、宇宙物理の三体問題を扱った第1巻より、さまざまなSF的エッセンスが積み込まれた本書の第3巻が、『三体』の物語を広げたからだと勝手に思ってる。

本書でてくる惑星衛星都市(スペースコロニー) マイクロブラックホール 人工冬眠 多次元からの攻撃 低次元化する攻撃 光速の減速 曲率ドライブ 核融合推進 小さな宇宙などのこれらのSF用語や、 さらにすこしネタバレすると、1巻目から地球人類の脅威となっていた三体文明以外の異星文明の存在。 これらのSF的エッセンスを最終巻に持ってくることで、三体ワールドが奥深くなり、SF好きな読者も心躍ることになるはず。

1巻と2巻は地球近傍での物語であったのに対し、本書の3巻は太陽系をいろいろ巡ってみたり、さらに宇宙の某所に行ったりと、『タイタンの妖女』さながらの場面展開(『三体Ⅲ』の、ほうが移動距離は長いですが)は、既刊にSF作品へのオマージュもあったので、意図して作者も描いているのかもしれないと感じる箇所もあり、SF好きはニヤリとするところである。

物語の構成も面白い。作中にとある寓話が挿話される。その寓話の意味を解読しようと、必死に主人公たちが右往左往するシーンがあるのだが、読者もその寓話の意味がその時点ではさっぱりわからないし、なんで、この作中作が解読されず放置されているのかなと頭の隅にありつつ、終盤の怒涛の展開まで読み進めると、その作中作の寓話の意味がわかり「このことか!」と主人公と一緒の気持ちにさせる物語の構成は本当に心地よい。

誰かの受け売りだけど、『三体』という作品が登場した前後ではSF作品への見方が変わるくらいのインパクトのあるすごい作品だった。